車椅子対応住宅の住宅例
平成15年4月に、ご主人が介護用車椅子の生活を余儀なくされている住宅の設計依頼を受けました。
車椅子対応住宅の住宅例の現地調査から竣工までの、その流れを追ってみました。
@現地調査
敷地現調写真 |
敷地現調写真 |
現地を調査することを、略して現調(げんちょう)と言います。
建築関係の方が「げんちょう」といったら、たぶん「現調」です。
現調内容は、近隣のお住まいや、現在の敷地の擁壁の状態、道路との高低差、水道やガスの引き込みの具合等々、大変多岐にわたります。
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現調は、その後の予算にも関係する大変重要な情報を収集しています。
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お客様のご要望では、車から直接、介護用車椅子で、
寝室に出入りできるようにしたいとのことでしたが、そこで、問題点が何点か・・・。
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- 駐車場と道路の高さを合わせると、現状の地盤の高さでは床高が高くなりすぎて、車椅子での出入りが困難になる。
- 排水経路に問題が。
ここの敷地は、汚水は前面のマンホール。雨水は裏側の側溝。
水勾配の関係上、簡単に地盤を下げるのは難しそう。もちろんポンプアップなど機械的に解決できるのですが、機械的に排水を解決するのはちょっと、いろいろイヤですよネ。
無駄なお金もかかりますし。
- 車の出入りの問題。
前面道路は、この先行き止まりになってます。しかも、前面道路は大変狭いです。納車の仕方も検討しないといけないです。
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こんな場合は総合的に上図のように
三次元設計で検討をおこないます。
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A初期段階の車椅子対応住宅提案プラン
1階平面図 |
2階平面図 |
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面積表 |
1階 |
70.38u |
21.29坪 |
2階 |
53.82u |
16.28坪 |
合計 |
124.20u |
37.58坪 |
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初期段階では、建物の配置と部屋のレイアウトを重点的に検討をしていきます。
このプランでは、車の出入りがしやすいように、駐車場の間口を広くり、余裕をもって納車することを可能にしています。水廻りの、「洗面」「浴室」は1.25坪。「トイレ」は0.75坪と介護用車椅子の対応を計るため、できるだけ広くとるように提案しました。
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B最終段階の車椅子対応住宅提案プラン
1階平面図 |
2階平面図 |
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面積表 |
1階 |
71.13u |
21.52坪 |
2階 |
54.72u |
16.56坪 |
合計 |
125.85u |
38.08坪 |
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紆余曲折をへて、決定したのが、左のプランです。
駐車はバックで進入することにしました。(左隣のその隣に旋回スペースがある)
初期段階とずいぶん変わりました。合計6回程度ラフプランを出したのですが、このようにはじめと最後でガラッと違うなんて珍しいことではありません。(少なくとも私の場合ですど・・・)
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C外観の検討
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間取りの検討と共に重要なのが、外観の検討です。
最初はシンプルな外観の提案をしました。
と、いうのが、
ここまでに至る打合せで私にはシンプルな外観がお好みだと確信があったからです。
んでもって提案したのが、
グレー調にまとめたすっきり目の外観なのですが、
お客様のお好みに合わなかったみたいです。
これはこれで私は大変好きなのですが、
どうでしょうか?
まあ、シンプルな外観でまとめる場合、存在感のある表現力豊かな外壁材をつかう必要もあるのですが(そうしないと、ほんとシンプル)。
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シンプルグレー |
シンプルグレー |
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ツートンモダーン |
ツートンモダーン |
D外観が決定
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コンピューターグラフィックによりお客様と共に打合せをしていく作業を続けていき、最終案としてまとまったのが上図の立面図です。
カク企画の場合、プレゼンの段階で建築見積も提出し、ご予算にと合わせて検討できるようにしています。
というのが、プランニングが完成し、設計図面完了後に建築見積をとると、予算オーバーなんてことになるからです。(最悪、練り直しなんてトホホ・・・な場合も)
もちろん、最終的な設計図面に基づいて建築見積は作成するのですが、現場出身という強みをいかして、プランニングの打合せの段階から建築見積の提出を行っております。プランニングの打合せを進めていくうちに、「建築費用」もだんだん煮詰まっていくものです。
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南立面図 |
東立面図 |
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北立面図 |
西立面図 |
付帯工事の代表例
工事種別 |
工事内容 |
外構工事 |
駐車場や外柵、アプローチ等。敷地の状況により、擁壁(土留め)工事が必要な場合は多大な出費の可能性が・・・。 |
解体工事 |
建て替えの場合の既存家屋等の解体。建坪あたり1万〜1万5千円と、状況によりプラスアルファがある。 |
浄化槽工事 |
35坪程度の住宅で60万程度の出費。ただし、下水が完備されている地域は不要。 |
照明器具工事 |
住宅価格の約3%〜5%の出費。イメージがつきやすい工事最終段階にて建て主と打合せをして決めることが多い。 |
冷暖房設備 |
高断熱高気密住宅やヒートポンプなど特別な機種でない限り、建て主が別途購入する場合が多い。 |
水道引き込み等 |
引き込みが必要な場合、予想外の出費となる。本管の道路埋設状況では、最悪、道路横断掘削なんてことも。 |
水道加入金 |
各自治体、また、水道の径の太さにより、7万〜30万など幅がある。他に水利組合費(浄化槽)等が必要な所も。 |
基礎補強工事※ |
地盤調査により軟弱地盤と判定されたら、支持杭等の補強を行わなければならない場合がある。 |
※地盤調査は最終的な設計図面に基づいておこなわれます。従って基礎の補強に関しては、プランニングの段階では、その費用を算出することができません。
以上のようなことを考えると、住宅にどの程度の予算がたてられるか把握できるので、より現実的な打合せが可能になるわけです。
E工事着工そして上棟
田尻工務店の棟梁と二代目
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上棟式(五色の旗)
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今回は餅巻きまでやる上棟式フルコースでした(何年ぶりだろうか?)。建て主様ありがとうございました。
田尻工務店さんとは、かれこれ12,3年のつきあいになってます(粕屋郡須恵町の工務店です)。棟梁そして最近ちょっと太り気味の二代目これからもよろしくお願いします。
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F車椅子対応住宅工事完成
例えば、配置確認ため地縄を張って、その地縄の中に立ってで確認してもらうと、「あれ、意外と小さいですね」とよく言われます。さらに工事を進めていって、3次元となった上棟後にイメージを聞くと、「思ったよりでっけ〜」と、またイメージが変わったりします。このようなイメージの変化の中で、また、工事期間中に打合せを行って浮かぶアイディア等により、追加、変更など珍しいことではありません。
じゃあ、変更できるんだったら、設計段階での打合せは適当でいいの?とつっこまれそうですが、いいえ!設計は工事の骨格となる基本中の基本。その段階で煮詰めるだけ煮詰めましょう。
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