瑕疵保証義務化で、住宅木造建築においても、地盤調査は必須となり、
お施主様も、地盤について、敏感に反応するようになりました。
が、
住宅営業マンさんに、ポンッと地盤調査データを渡されても、わかりませんよね?
住宅営業マンさんも、実は良くわかってなかったりします。
というわけで、地盤の基礎知識の頁作りました。
造成地について
地盤の判断基準として、長期許容地耐力(qa)と沈下量の2つが重要な要素なのですが、
軽い木造住宅の場合は、沈下に対する検討が重要な要素となります。
沈下で一番注意したいのは、造成地です。
傾斜地の造成
- 敷地全てが切り土なら問題なし。
盛り土と切り土が混載している場合は要注意。
盛り土と切り土の不均一さが不同沈下の要因となる場合がある。
造成して1年未満
- 敷地全てが切土であれば問題なし。
その他の場合、これまでの事故例から一年未満の造成地においては不同沈下の可能性が極めて高いと言われている。
このため地盤改良や杭地業を要する場合がある。
造成して10年が経過
- 安定した地盤と判断する際に問題となるのは残留沈下。
この残留沈下量は土性によって異なるが、
一般に10年以上経過すると地盤はかなり安定してくるとの経験則ある。
このため、盛土による沈下量については、造成後の経年変化10年が判断に当たっての大きな目安。
谷地や沼地の造成地
- 谷地は、盛土造成されることがほとんど。
沼地はヘドロの堆積や有機物を多量に含んでいることが多く、
含水量の多い極めて軟弱な地盤を形成している可能性が大。
このため圧密沈下量は非常に大きく、道路における車の振動の影響などでも、建物に大きな不同沈下を生じさせる恐れがる。
解体時の残物等がある敷地
- 解体時の廃棄物や造成時の樹木やガラなど本来産廃処理しなければならないものが場内処理された敷地あるが、
このような場合、地中の解体残物やガレキ等の周辺に空隙があり、長年の降雨などにより上砂が回り込み陥没現象が起きる可能性がある。
こうした陥没はどこに発生するか予測不能で、かなり難しい基礎補強等の検討が必要。
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レキ・砂質土の特性
- 粘着力がなく粒子が粗いため透水性は良い。
また、力の分散効果が高いので、盛土等の荷重が作用しても浅い部分で分散し、
深部まで影響することは比較的少ない。
なお、雨水等の水締めがきき、地盤が安定するまでの時間は短い。
河口等の砂は粒子の大きさがそろっているため、締まり具合がルーズな場合や地下水位が高い場合などは、地震時に液状化現象を引き起こす。
粘性土の特性
- 粒子が細かく粘着力があり不透水層を構成する。
そのため水分が抜けにくく、良化するのに時間がかかる。
また盛土等の荷重が作用した場合、軟弱な粘性土層は、かなり深部まで圧密の影響を受けるため沈下量は多い。
泥土(シルト)、腐植土の堆積層
- 一般的に、泥土(シルト)の堆積地は含水量が多く、非常に軟弱な地盤状態となっている。
また周辺状況の変化に即応する地盤のため、自動車が通ると揺れたり、道路方向に不同沈下を起こしたり、地下水位の変動で簡単に沈下を起こす地盤である。
腐植物が混入した土地は、その部分が非常に軟弱な地盤になっている。
セメント系の国化剤は、腐植物の混入があると固化する力が弱く、適さないことがある。
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擁壁について
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擁壁高さが高いと客土の量も多い。
また、擁壁際の裏込め部で不同沈下が多く発生している。
地盤調査の結果で支持杭が必要となる場合、
計画建物は擁壁のフーチングに載らないようにする。 これは支持杭がフーチング部分にあたるのを避けるためである。
敷地が狭く、やむなく計画建物が擁壁のフーチングの上にかかってしまう場合、
フーチングの際に支持杭を配置し、擁壁側に杭から張り出す基礎部に十分な梁補強等を施すとか、
盛土部分の地盤改良を行うなどの対策を施すこと。
擁壁高さが1m以上あるが建物の離れが擁壁高さの1.5倍以上ある場合や、
造成地で盛土部分ではあるが10年以上経過した建替など、
場合によっては安全と思われるケースも想定される。
このようなケースは専門家と協議の上判断する。
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カク企画で、依頼している地盤調査会社のスウェーデン式サウンディング試験の、
試験方法を記載した説明書には、下記のように記載されています。
- 下図のような試験装置を用いて、先端にスクリューポイントを取り付けたロッドを鉛直に立てて支える。
- ロットが地中に貫入するかどうかを確かめ、貫入する場合には荷重に対する貫入量を記録する。
貫入しない場合は荷重を順次載荷(荷重の段階は0.05kN、O.15kN、0.25kN、0.50kN、0.75kN、1.00kNの順)し、
途中貫入する場合は、荷重に対する貫入量・貫入状況を記録し、その操作手順を繰り返す。
- ※ 自動試験装置の荷重段階は、0.50kN、0.75kN及び1.00kN
- 1.00kNでロットの貫入が止まった場合は、ロットを右回りに回転させ次の目盛り線(25p毎)まで貫入させるのに要する半回転数・貫入状況を記録する。
- 測定終了後、載荷装置を取り外し、貫入した全ロットを引き抜き、
その本数及び、スクリューポイントの異常の有無を調べる。
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主要諸元 |
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全長 |
2060mm |
全幅 |
880mm |
全高 |
1530o |
全重量 |
700kg |
ロッド
回転数 |
42半回転/min
at2000r.p.m(エンジン)
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@ |
母体本体 BFS9010 |
A |
操作盤 |
B |
パワーパツケージ |
C |
油圧シリンダー 750L |
D |
チャック部 |
E |
発電機 1.5KVA |
スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)をもう少しわかりやすく
まず、キリが付いたロッドを回転させずに、0.50kN(約50kg)→0.75kN(約75kg)→1.0kN(約100kg)とだんだんと重く、荷重をかけていきます。
そして、ある荷重をかけた時、ずぶずぶと地中に入っていったとします。
キリを回転させないのに入っていったので自沈となります。で、その荷重値を記録します。
で、1.0kN(約100kg)まで、荷重をかけてもキリが地中に入っていかなかったとします。
そしたら、キリを回転させて地中を掘っていきます。
そして、25p掘るのに何回転(データ値は半回転数)したかで、地盤の堅さを計ります。
例えば、電動ドリルで硬いコンクリートに穴を掘るときは、たくさん回転させなければ掘れませんが、
柔らかい木は、少ない回転数ですぐに掘れます。
豆腐やコンニャクにいたっては、回転させなくてもずぶっと入ります。すなわち自沈です。
ちなみに、木造住宅の場合は、1uあたりの建物重量は、約13kNと言われています。 これは、体重65Kgで足のサイズが25pの人が地面に立っているのと同程度の重さです。
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これらの作業を、25p毎に行って随時記録したのが基礎データとなります。
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地盤調査データを読み解くのに必要な知識です。
地盤調査データサンプル(PDFファイルを別頁で開く)
スウェーデン式サウンディング試験では25p貫入させるのにハンドルを何回半回転させたかで、
その地盤を判断することになっている。
このため、貫入深さは0.25m単位で記載されており、たとえば3.00と表記された部分については2.75m〜 3.00m間の調査結果が記載されている。
スウェーデン式サウンディング試験用の部品の重さはセットすると5kgとなり、
これに10kgの重りを2個載せる。次に25kgの重りを状況を見ながら、計3個載せて沈下を観測する。
したがって、基本的には25p毎に、0.25kN(25kg)、 0.50kN (50kg)、 0.75kN (75kg)、1.00kN(100kg)の数字で荷重が記される。
1.00kNで自沈が起こらなかった場合、ハンドルを半回転づつ回し、25p貫入させるのに何回動作を行ったか、その半回転数を記している。
上記Naを1mあたりの深さに換算させるため4倍した数値に換算しており、
地盤を判断する場合の目安になる。
D 記事貫入状況
25p貫入させるときの状態を表してあり、地盤の軟弱さや土質などを判断する記事が書かれている。
下に表現の一例を示す。
(自沈速度)速い場合…急速、ストン、回転急速、無回転急速
遅い場合…ゆっくり、回転緩速
(非常に堅い)貫入不能
(土質)砂…シャリシャリ、レキ等…ガリガリ
E 推定地質
粘性土、砂質土、レキなど土の種類が記載されている。
F 換算N値
土質を勘案しNswから下記計算式でN値を推定してある。
N値の換算は必要不可欠としているかどうかにもよるが、基本的には、WswやNswの大きさから、
N値に換算して記載することがある。
なお、換算方法としては、下式などが提案されている。
粘性土N=0.03Wsw(Wswはニュートン(N)を表わす)+0.05Nsw
砂質土N=0.02Wsw+0.067Nsw
荷重kNと1mあたりの半回転数のグラフについて
- 荷重のグラフWsw(N)
- 荷重を0.25kN単位で加えいって自沈が起こるか調査する部分で、どのくらいの荷重で沈下したかイメージで解るものです。
この範囲でグラフがとどまっていると軟弱な地盤と判断できます。
なお、25p以上が一気に落ち込んでしてしまう場合もあり、
このようなケースの場合は別の理由がある場合もあり、データの読み取りに注意する必要があります。
- 貫入量1mあたりの半回転数のグラフ
- 1.00kNで自沈が起こらなかった場合、1m貫入させるのに必要な半回転数が表現ています。
この部分にグラフが延びている場合は、比較的良い地盤層と判断できます。
ただし、工場跡地のようなときで、部分的にガリガリと音がした場合は、解体残物混入疑う必要があります。
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地盤の許容応力度の算定
基礎計画において、地盤の長期許容応力度は重要な項目です。
地盤の許容応力度の求め方
SWS試験結果による、長期許容応力度qaを求める計算式は、平13国交告1113号第2(3)によると、
- qa(kN/u)=30・Wsw+0.6・Nsw
- これでは、意味が良くわからないので、下式として解釈しましょう。
- 地盤長期許容応力度=30×荷重+0.6×1m当りの半回転数
また、注意事項として、
- Nswが150を超える場合は150
- 上記式にて調査した地点ごとに2m以内のqaの平均を算出する
- 調査した地点の最小値が、地盤の長期許容応力度qaとなる
- 短期許容応力度は長期×2
計算してみる?
下表のデータを地盤調査会社からもらった場合を例に計算してみましょう。
調査ポイント=A地点、基礎根入れ深さ=GL-400oより、貫入深さ0.25m〜2.25mまでのNsw値及びWsw値から各層の長期許容応力度を計算したその平均。
A地点の調査データ
NO. |
荷重
Wsw
(kN) |
半回転数
Na
(回) |
貫入深さ
D
(m) |
貫入量
L
(p) |
1m当りの
半回転数
Nsw |
推定土質 |
1 |
0 |
0 |
0.25 |
25 |
0 |
自沈 |
2 |
1 |
6 |
0.50 |
25 |
24 |
|
3 |
1 |
2 |
0.75 |
25 |
8 |
|
4 |
1 |
2 |
1.00 |
25 |
8 |
|
5 |
0.75 |
0 |
1.25 |
25 |
0 |
粘性土(自沈)
層厚1m |
6 |
0.75 |
0 |
1.50 |
25 |
0 |
7 |
0.75 |
0 |
1.75 |
25 |
0 |
8 |
0.75 |
0 |
2.00 |
25 |
0 |
9 |
1 |
3 |
2.25 |
25 |
12 |
粘性土 |
10 |
1 |
2 |
2.50 |
25 |
8 |
11 |
1 |
2 |
2.75 |
25 |
8 |
12 |
1 |
2 |
3.00 |
25 |
8 |
13 |
1 |
3 |
3.25 |
25 |
12 |
14 |
1 |
5 |
3.5 |
25 |
20 |
NO. |
2 30×1+0.6×24=44.4 |
NO. |
3 30×1+0.6×8=34.8 |
NO. |
4 30×1+0.6×8=34.8 |
NO. |
5 30×0.75+0.6×0=22.5 |
NO. |
6 30×0.75+0.6×0=22.5 |
NO. |
7 30×0.75+0.6×0=22.5 |
NO. |
8 30×0.75+0.6×0=22.5 |
NO. |
9 30×1+0.6×12=37.2 |
平均値:(44.4+34.8+34.8+22.5+22.5+22.5+22.5+37.2)/8=30.2kN/u |
A地点の長期許容応力度は30.2kN/uとなります。
実際は、4、5ヶ所ほど調査しますので、それぞれの地点の長期許容応力度を求めた最小値が、
その敷地の、地盤長期許容応力度となります。
地盤の長期許容応力度を検討する深さの範囲
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地盤の長期許容応力度は基礎底面から約2mの深さまで検討します。
これは、2階建て木造住宅の場合、建物荷重が11〜 13kN/u程度で、地盤のもつ分散効果を考えると、布基礎とべた基礎では分散効果に違いはありますが、
だいたい基礎底面から2m程度で、ほとんど建物荷重が分散してしまうためです。
ただし、沈下については、2m以深(約5mまで)についても検討する必要があります。
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平13国交告1113号によると、SWS試験において、基礎底面から、2m以内に1kN以下で自沈する層がある場合、
もしくは、基礎底面から下方2mを超え5m以内に500N以下で自沈する層がある場合は、
建物自重による沈下、その他の地盤の変形等を考慮して、建物に有害な損傷、変形、及び沈下が生じないことを確認するとなっています。
地盤の長期許容応力度と混合しがちですが、
建物の自沈は地盤の長期許容応力度とは別に検証しなければなりません。
計測点全てで自沈層が全くない
計測点(4箇所以上)全てで自沈層が全くない場合、
地盤の長期許容応力度が30kN/ゴ以上あると考えられる。
また、不同沈下の恐れも少ないと考えられることから布基礎で対応してよい。
計測点全てが「0.75kNゆつくり自沈」以上の場合で、各計測点のデータがほぼ均一
計測点(4箇所以上)全てにおいて、計測項目の荷重(Wsw)が「0.75kN」であり、
貫入状況が「ゆっくり自沈」以上(急速自沈がない場合)で、
全ての計測データがほぼ均一の場合、沈下が生じても等沈下となるので、
べた基礎にて対応してよい。
深さ2m以浅に「0.50kN自沈」以下が合計して50cm以上ある
計測点の一箇所でも、基礎底面を基準として2m以浅のデータに「0.50kN自沈以下」が合計して50
cm以上ある場合は、
表層部の支持力と圧密沈下に問題があると考えられる。
このため地盤改良や基礎杭などの対応をおこなう必要がある。
深さ2m以深10m程度の間に「0.50kN自沈」以下が連続して100cm以上
又は合計で200cm以上ある
計測点の一箇所でも、基礎底面を基準として深さ2m以深に「0.50kN自沈J以下が連続して100cm以上又は合計で200cm以上ある場合は、深層部に圧密沈下の問題があると考えられる。このため基礎杭や柱状改良などの対応をおこなう必要がある。
簡易グラフによる圧密沈下量の算定
自沈層と圧密沈下量の簡易グラフ |
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左図は、基礎底面から2mまでの範囲と、基礎下2〜5mまでの範囲の圧密沈下量推定値のグラフです。
このグラフで、おおよその沈下量を求めることができます。
上に掲載している、A地点の調査データを例にすると、
基礎下0〜2mまでで、自沈層の層厚は1mですから、
左図のピンクのグラフ線をたどると、沈下量は、4.5pだということが解ります。
「建築基礎構造設計指針」で、即時沈下量2p以下、圧密沈下量10p以下と定められていまが、
できれば、圧密沈下量5p以下におさえたいものです。
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- 基礎底面下より2mまで:Wsw≦1kNで自沈する層
- 基礎底面下2m〜5mまで:Wsw≦0.5kNで自沈する層
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